前回、小規模事業者である個人事業主が現金主義による所得計算を行うための手続きについて見てゆきました。
↓前回記事はこちら
一度現金主義を選択したからと言って、今後ずっとその方法を続けなければならないということではありません。
ただし、届出書を提出し特例として現金主義による計算を行なっていますので、止める場合に何の手続きもなく「今年から止めまーす」という訳にはいきません。
止める時にも届出書を提出しましょう。
現金主義による計算を止める場面
現金主義により所得計算を止める場面とは、一体どのような状況でしょうか。
例えば、今まで現金主義で所得計算を行なってきたが今後は青色申告特別控除として65万円の控除を受けたい、という場合が想定されます。
↓参考記事
65万円の控除を受けるための要件の1つに、
・青色申告者のうち、現金主義による所得計算を選択していないこと
というものが含まれています。
現金主義による計算を選択している場合、これを止めることで65万の控除を受けることができるようになります。(現金主義計算のままだと10万円の控除)
「今年の計算は発生主義で行いました」だけではダメです。
選択したものを取り止めて、「選択していない」状態にすることが必要です。
「現金主義による所得計算の特例を受けることの取りやめ届出書」を提出
現金主義の特例を受けることを止める場合、その旨を記載した届出書を提出します。
この届出書に記載することとなっている資産負債の額は、過去に提出した「現金主義による所得計算の特例の適用を受けることの届出書」に記載した資産負債の額です。
取りやめをする年の前年末日時点の資産負債の額ではありません。
提出時期
現金主義の特例を受けることを止めようとする年の3月15日まで。
提出先
納税地を所轄する税務署へ提出します。
止めた後、再び現金主義による所得計算の特例を受ける場合
一度取り止めたものの、再度現金主義による所得計算の特例を受ける選択をする、ということも起こり得ます。
この場合、再度「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を提出すればOK……ではありません。
異なる書類を提出することとなります。
「再び現金主義による所得計算の特例の適用を受けることの承認申請書」を提出
再度現金主義による特例を受けようとする場合、次の申請書を提出します。
当初提出した「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」と異なり、
- 過去に現金主義による所得計算の特例を受けていた期間
- 特例を受けなくなった理由
を記載する欄が追加されています。
また、裏面に記載する資産負債の額は、今回改めて特例を受けようとする年の前年末日時点での資産負債の額を記載します。
提出時期
適用を受けようとする年の1月31日まで。
3月15日ではありません。要注意です。
提出先
納税地を所轄する税務署へ提出します。
その他
1度目に提出した書類は「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」でした。
こちらは提出するだけ(届け出るだけ)で現金主義による計算がOKとなります。
一方、再度の適用を受けるために提出する書類は「再び現金主義による所得計算の特例の適用を受けることの承認申請書」です。
提出(申請)後に税務署からの通知を受けることによって、再度の現金主義による計算を行うことができるようになります。
なお、その年の3月15日までに処分の通知がなかった場合には、承認されたものとみなされます。
まとめ
現金主義による所得計算の特例を受けた後の、現金主義を止める場合、再度現金主義の特例を受ける場合の手続きについて見てゆきました。
1度目と2度目で提出する書類が異なる点には注意が必要ですね。