個人事業主のうち小規模事業者に該当する方は、事業所得の計算を現金主義によって行うことができます。
ただし、勝手に現金主義を採用してよい、というものではありません。
その内容と手続きについて確認してゆきます。
小規模事業者とは
小規模事業者とは、次の要件に該当する者を指しています。
■小規模事業者
その年の前々年分の、
・不動産所得
・事業所得
(それぞれ青色事業専従者給与、事業専従者控除の金額を差し引く前の金額)
の合計額が300万円以下であること。
式に置き換えると、2年前の所得が、
{(不動産所得+事業所得)+専従者給与or専従者控除額}≦300万円
であれば小規模事業者となります。
現金主義とは
現金主義とは、現金の受取や支払が発生した時点で収入や経費を会計処理する方法です。
一方、本来適用される発生主義とは、収入や経費の事実が発生した時点でこれらを会計処理する方法です。
これらの違いを見てゆくと、次のようになります。
⑴2021/12/31 100円の商品売上(即日現金で受取)
2021/12/31 | (借方) | (貸方) |
現金主義 | 現金 100 | 売上 100 |
発生主義 | 現金 100 | 売上 100 |
⑵2021/12/31 100円の商品売上(請求書渡し、2022/1/31に現金で受取)
2021/12/31 | (借方) | (貸方) |
現金主義 | 仕訳なし | |
発生主義 | 売掛金 100 | 売上 100 |
2022/1/31 | (借方) | (貸方) |
現金主義 | 現金 100 | 売上 100 |
発生主義 | 現金 100 | 売掛金 100 |
⑵のように直ぐに決済されなかった際には、場合により収入・経費を計上する年が異なることになります。
上記例では、
- 現金主義 2021年売上0、2022年売上100
- 発生主義 2021年売上100、2022年売上0
ですね。
発生主義の場合には、現金出納帳の他、売掛帳や買掛帳などを備え付けておかなければ、正しい収入・経費を把握することができません。
一方、現金主義の場合には、現金出納帳があればその年の収入・経費を把握することが可能です。
この点で現金主義を採用すると簡易に所得計算を行うことができると言えます。
適用要件
現金主義を採用するためには、次の要件を満たす必要があります。
- 青色申告者であること
- 小規模事業者であること
- 適用を受けようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合には、開業した日から2月以内)に届出書を提出すること
「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を提出
次の届出書を、納税地を所轄する税務署へ提出します。
裏面には、適用を受ける前年末日時点での資産負債を記載します。
まとめ
小規模事業者が現金主義によって所得計算を行う際の手続きについて見てゆきました。
現金主義の採用は、あくまで要件を満たして届出を行った者にのみ適用されます。
該当しない方は原則、発生主義での所得計算を行うことになりますのでご注意を。