非居住者が内国法人の株式を譲渡した場合、その譲渡益について課税されるかどうか。
一定の条件に該当した場合には日本で課税されることとなり、
そうでない場合は非居住者の居住地である国で課税されることとなります。
これらを分けることとなる条件について見てゆきます。
非居住者による内国法人株式譲渡の位置付け
日本の非居住者は、国内源泉所得に限り所得税が課税されることとなっています。
では、今回の「内国法人株式の譲渡による所得」、こちらは国内源泉所得に含まれるのでしょうか。
これについては、
「一定の条件を満たす内国法人株式の譲渡による所得」
のみが国内源泉所得となります。
イメージとしては、
- 原則としては日本では課税されない(居住国にて課税される)
- ただし、条件を満たしてしまった場合のみ例外的に日本で課税される
という順序です。
国内源泉所得に該当するための条件は2つ
次の2つの条件に該当した場合に、内国法人株式の譲渡所得は国内源泉所得となり、日本で課税されます。
⑴ 譲渡年以前3年以内のいずれかの時において、内国法人の特殊関係株主等がその内国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の25%以上に相当する数又は金額の株式又は出資を所有していたこと
⑵ 譲渡年において、内国法人の特殊関係株主等が最初にその内国法人の株式又は出資の譲渡をする直前のその内国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の5%以上に相当する数又は金額の株式又は出資の譲渡をしたこと
それぞれアンダーラインの部分をつなげて読んでいただくと分かるとおり、
それぞれ発行済株式総数に対し、
- 譲渡の年以前3年以内に25%以上の株式を所有
- 譲渡の年に5%以上の株式を譲渡
です。
なお、これらは「内国法人の特殊関係株主等」が条件を満たした場合、です。
特殊関係株主等には、
- その譲渡をした株主等
- 株主等の親族
- 株主等と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
- 株主等の使用人
- 上記使用人の生計一親族
- その他株主等によって生計を維持しているもの
が含まれます。
譲渡した株主本人が25%以上の株式等を有していなかった場合でも、他の株主次第でこの条件に該当する可能性がある点に注意です。
租税条約の確認が必要
日本国内の法律での判定は上記に述べた通りです。
ただし、国外が絡む取引については、その国との租税条約を確認することが必要となります。
租税条約と国内法で異なる内容となっている場合、租税条約が優先されるためです。
当該取引について租税条約内での規定の有無を、忘れずに確認しましょう。
まとめ
非居住者が内国法人株式の譲渡を行った場合の課税関係について見てゆきました。
非居住者の取引については、国内源泉所得に該当するかどうか、しっかりと判定を行うことが重要です。
「非居住者だから日本で税金かからないよね」とはならないケースの一例でした。